ハチミツに殺菌・抗菌作用があるって本当?その要因や科学的メカニズムを紹介!

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『ハチミツには殺菌作用抗菌作用がある』

ってよく聞きますよね?

最近では抗菌作用がとくに強いマヌカハニーというハチミツも登場して、口内炎の殺菌や喉の痛み緩和に使ったりする人も多いようです。

でもどんな理屈でハチミツが細菌にそんな効果を発揮しているのか?それを理論的に知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。

ハニウィキちゃん
そう言われると、ちゃんとは知らない….

実は近年(2012年くらい)まで、科学的なメカニズムがハッキリしていなかったようです。

今回はそんな、おばあちゃんの知恵袋的にしか知らなかった『ハチミツの殺菌・抗菌作用のメカニズム』について、専門の研究データなどを交えつつ紹介していきます!

ハニウィキちゃん
ちょっと専門用語とか出てくるけど、かみ砕いて解説していますので、どうぞお付き合いください。
「殺菌」の表現について

殺菌と抗菌は似ていますが、

  • 【殺菌】:文字通り菌を殺す・死滅させる
  • 【抗菌】:殺せないまでも、増殖を阻害する・抑える

という意味になります。(参考:花王|製品Q&A

法律(医薬品医療機器等法)によると「殺菌」という言葉は医薬品・医薬部外品にのみ使用できる単語になり、ハチミツは医薬品でも医薬部外品でもないため、たとえ菌を殺す効果があったとしても、以降、この記事内では「抗菌作用」という言葉で表現させていただきます。

ご了承くださいm(_ _)m

ご注意

乳児ボツリヌス症の危険がありますので、1歳未満の赤ちゃんにはハチミツを食べさせないようにして下さい。

ハチミツの抗菌作用の要因は主に3つ

まず最初に、ハチミツの抗菌作用の要因だけ一通り見てみましょう。

  • 高い糖度
  • 少し酸性
  • 過酸化水素とハチミツ栄養素の相乗効果
ハニウィキちゃん
うーん…なんとなく聞いたことがある….かも。

今回はこれらについて、もっと詳しく見ていこうと思います!

ハチミツの抗菌作用のメカニズム

高い糖度

高い糖度のイメージ

ハチミツは約80%が糖分です。ちなみにその糖分の内訳は以下のような感じ。

フルクトース
(果糖)
約51%
グルコース
(ブドウ糖)
約42%
ガラクトース約4%
マルトース
(麦芽糖)
約2%
スクロース
(ショ糖)
約1%
オリゴ糖
デキストリン
ごく少量

引用元: 株式会社しげのや|ハチミツの話、Wikipedia|蜂蜜

ハニウィキちゃん
なんで糖分が高いと抗菌できるの??

それはズバリ、ハチミツが、

細菌の活動・繁殖に必要な水分を吸い取ってしまう

からです。

ハチミツは空気中の水分を吸収します
これだけでも細菌にとっては活動しにくい状況になるのですが、それに加えて、なんと細菌体内の水分も吸収してしまいます。

浸透圧と呼ばれる現象ですね。

細菌も体内の水を奪われたら、ひとたまりもありません。

ハニウィキちゃん
なるほど。それもあって「ハチミツは腐りにくい(=細菌が繁殖できない)」とも言われるんだね!

基本そうなんですが、例外もいます。
ボツリヌス菌です。

ボツリヌス菌について

乳児ボツリヌス症の原因菌であるボツリヌス菌は例外です。

ボツリヌス菌は通常、「芽胞」と呼ばれる硬い卵の殻のようなものの中に存在します。この殻にはハチミツの抗菌作用が通用しないので、ハチミツの中でもボツリヌス菌は生きていけます。(冬眠状態のイメージです)

これが人間の腸内など「酸素の少ない環境」になると、芽胞からボツリヌス菌が出てきて毒素を出しはじめ、中毒症状を引き起こす可能性があります。

健康な1歳以上の子どもや成人では、ボツリヌス菌が口から体内に入っても、腸内細菌との競争に負けてしまうため、ボツリヌス菌は増殖しません

引用:内閣府食品安全委員会|ボツリヌス症について

1歳未満の乳児は腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう=多種多様な腸内細菌の集まり)および腸管による排出運動が未熟であり、免疫の仕組みが完全にできあがっていません。

引用:株式会社山田養蜂場|蜂蜜のボツリヌス菌について

とりあえずここでは、消化器官に問題がない1歳以上の人は、ボツリヌス菌は腸内の生存競争で負けるので影響はない、と思っていただければ大丈夫です。

(ボツリヌス菌についてもっと知りたい方は以下の記事をご参照ください↓)

ボツリヌス菌電子顕微鏡写真

ハチミツにはなぜボツリヌス菌が入っている可能性があるのか?大人が大丈夫な理由は?

2018年5月25日

赤ちゃんにハチミツがダメなのはなぜ?『乳児ボツリヌス症』の症状や万が一の対処方法も解説

2018年12月4日

少し酸性

pHのイメージ

ハチミツのpHはおよそ3.2〜4.9(平均 3.7)と言われています。

弱酸性ってやつですね。

蜂蜜の水素イオン指数(pH)は、3.2から4.9(平均 3.7)と弱酸性であるが、酵素によって生成された有機酸を含むためである。

引用:Wikipedia|蜂蜜

ハニウィキちゃん
ハチミツを酸っぱく感じにくいのは、それ以上に糖の甘みが強いからなんだって〜

で、これが抗菌とどう繋がるかというと、いくつかの細菌は酸性に弱いです。

The minimum pH values for growth of some common pathogenic bacteria are: E. coli (4.3), Salmonella spp. (4.0), P. aeruginosa (4.4), S. pyogenes (4.5)

【訳】
いくつかの一般的な病原性細菌が増殖するために必要な最小のpHは、
・大腸菌がpH4.3
・サルモネラ菌がpH4.0
・緑膿菌がpH4.4
・化膿レンサ球菌がpH4.5

引用:Asian Pac J Trop Biomed|Honey: its medicinal property and antibacterial activity

つまり例えば、大腸菌はpH4.2とかでは生きていけない(pH4.3でギリギリ瀕死状態)ってことです。

酸性はpHの数字が小さいほど強力になっていくので、上述したハチミツの平均pH3.7と照らし合わせると、細菌が活動するのにはハチミツの酸性度はかなり厳しい環境なのが分かりますね。

ハニウィキちゃん
オレンジやお酢とかと同じ酸性度だから、人間が心配するほど強力な酸ではないよ。

過酸化水素とハチミツの栄養素

栄養のあるハチミツのイメージ

少しハチミツに詳しい人なら、

「ハチミツから過酸化水素が作られるので抗菌作用がさらに強い」

というのを知っているかもしれません。

過酸化水素というのは、オキシドールとかの消毒薬に使われていますね。医療現場で滅菌するときにも使われる強力な殺菌成分です。

実はこの『ハチミツの過酸化水素が抗菌してくれる』の理屈は、間違いではないのですが、ちょっと語弊があります

なぜなら、

ハチミツの過酸化水素は濃度が極端に低いため、それ単体では大した効果はない

からです。

そしてこれが最近まで科学的に疑問視されてた点でもあるのです。

「ハチミツの過酸化水素は濃度が低いのに、どうして強い抗菌作用があるの?糖度の高さと酸性だけじゃ説明できないよ….」というのが専門家たちの間で言われていたんですね。

それが2012年に発表された研究で明らかにされたようですので、今回、その情報を交えて解説をさせていただきます。

 

●たしかにハチミツは過酸化水素を作り出す

ハチミツからは過酸化水素ができますが、これはハチミツに含まれている酵素(グルコースオキシダーゼ)が元になっています。

グルコン酸は蜂蜜のグルコースオキシダーゼと蜜中のグルコースとが反応して生成し、(中略)この時過酸化水素も生成するが、この物質は蜂蜜の細菌生育抑制作用要因の1つになっている。

引用:玉川大学農学部|蜂蜜の特性とその利用

グルコースは前述の糖度のお話で出てきました。ハチミツに含まれる糖分の一種で「ブドウ糖」とも呼ばれます。細菌生育抑制作用というのは、いわゆる抗菌作用のことですね。

それと、グルコースオキシダーゼは空気中の酸素とも反応して過酸化水素を作り出すそうです。

 

●しかし濃度は、とっっっても低い

過酸化水素は「医療現場でも使われる強力な殺菌成分」と上述しました。

過酸化水素は生物の細胞を傷つけます。

オキシドールを傷口にかけると痛みを感じますよね?あれは傷口まわりの自分の細胞も傷つけられているから感じる痛みなんです。(濃度6%を超える過酸化水素の水溶液は、毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています)

これが、体が小さな細菌となると、生命活動できないほどにダメージを受けるわけです

Hydrogen peroxide is commonly used to disinfect and sanitize medical equipment in hospitals.(中略)the bacterial cell death results from the accumulation of irreversible oxidative damages to the membrane layers, proteins, enzymes, and DNA.

【訳】
過酸化水素は病院の医療器具を消毒するのに使用されている。(中略)細菌の死は、細胞膜、タンパク質、酵素、DNAへの不可逆的な酸化損傷のためである。

引用:Front Microbiol|Re-Examining the Role of Hydrogen Peroxide in Bacteriostatic and Bactericidal Activities of Honey

ハニウィキちゃん
う〜〜ん….ハチミツが危険なモノに見えてきた….

いえいえ、重要なのは濃度です。

一般家庭にもある消毒薬オキシドールの過酸化水素の濃度は、2.5〜3.5%ほど。

対して、ハチミツの過酸化水素の濃度は0.003〜0.03%ほどだと言われています。

At high concentrations, ranging from 3 to 30% (0.8 to 8 M), its bactericidal effectiveness has been demonstrated against several microorganisms including Staphylococcus-, Streptococcus-, Pseudomonas-species, and Bacillus spores.(中略)However, the hydrogen peroxide content in honey is about 900-fold lower.

【訳】
(過酸化水素が)3〜30%の高濃度において、ブドウ球菌、レンサ球菌、シュードモナス種、バチルス胞子を含むいくつかの細菌に対して殺菌効果が実証されている。(中略)しかしながら、ハチミツ中の過酸化水素含有量は約900分の1である。

引用:Front Microbiol|Re-Examining the Role of Hydrogen Peroxide in Bacteriostatic and Bactericidal Activities of Honey

計算すると、およそ0.003〜0.03%になりますね。

この程度の濃度で殺菌・抗菌効果が得られるなら、オキシドールだってもっと過酸化水素の濃度は低く作られているハズです。そのほうが製造コストが安く済みますし….

ハニウィキちゃん
たしかに濃度だけ見ると効果なさそう。

 

●他の栄養素との相乗効果がポイント!

実際、ハチミツに含まれる過酸化水素単体だけでは大した抗菌効果がない、という研究結果が多く出ていたようです。

なので、「ハチミツの過酸化水素なんて意味がない」「ハチミツに抗菌作用があるなんて嘘っぱちじゃないの?」という意見の人もいたようですね。

ハニウィキちゃん
結論としては、どうなの?

結論から言えば、

ハチミツに含まれる他の栄養素が過酸化水素の抗菌効果を増強させる

ということのようです。

The lower concentrations of honeys H2O2 required to effectively degrade chromosomal DNA strongly suggest that the oxidizing effect of H2O2 was augmented by other honey components such as transition metals (Fe, Cu) commonly present in honeys.

【訳】
ハチミツの低濃度な過酸化水素は、ハチミツの中に一般的に含まれている鉄(Fe)や銅(Cu)といった遷移金属によって、染色体DNAの分解を効果的に増大させた

引用:Front Microbiol|Re-Examining the Role of Hydrogen Peroxide in Bacteriostatic and Bactericidal Activities of Honey

► A coupling chemistry between polyphenols and H2O2 was the mechanism underlying DNA degradation by honey.
► Honey polyphenols emerged as active intermediates that were necessary to confer oxidative action of hydrogen peroxide.
► The antioxidant/prooxidant properties of honey polyphenols play a critical role in bacterial DNA degradation.

【訳】
► ポリフェノールとH2O2(過酸化水素)の化学的なカップリングが、DNA分解メカニズムの基礎になっている。
► ハチミツのポリフェノールは、過酸化水素の酸化作用を付与するのに必要な活性中間体として発現した。
► ハチミツのポリフェノールの抗酸化/酸化促進特性は、細菌のDNA分解に重要な役割を果たす

引用:Food Chemistry|Unraveling a mechanism of honey antibacterial action: Polyphenol/H2O2-induced oxidative effect on bacterial cell growth and on DNA degradation

いろいろ用語が並んでますが、要するに、

ハチミツに含まれるミネラル分ポリフェノールが過酸化水素の抗菌作用を増幅させる

ということですね。

ハニウィキちゃん
なるほど!いろんな栄養素を含むハチミツならではのメカニズムがあったんだね!

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マヌカハニーはメチルグリオキサールも

巷で「抗菌活性がめっちゃ強い」と話題のマヌカハニーは、これまで紹介した要因にプラスして、メチルグリオキサール(英語表記であるMethylGlyOxalの頭文字をとってMGOとも呼ばれています)という成分が強く作用しています。

メチルグリオキサールも細菌の細胞やDNAを傷つける作用があるようですが、細菌の「べん毛」や「せん毛」に対して特に威力を発揮するそうです。

MGO causes alterations in the structure of bacterial fimbriae and flagella which would limit bacteria adherence and motility.

【訳】
MGOは、せん毛やべん毛の構造を変化させ、細菌の付着や運動を妨げる。

大腸菌へのメチルグリオキサール効果

引用:Ultrastructural Pathology|How methylglyoxal kills bacteria: An ultrastructural study

引用の中の顕微鏡写真は、大腸菌にメチルグリオキサール(MGO)を与えたもので、写真A→B→C→Dとなるにつれメチルグリオキサールの濃度を高くしているそうです。

これによると、メチルグリオキサールの濃度が高まるほど大腸菌のべん毛やせん毛は失われていき、ある程度濃度が高くなると毛がなくなるばかりか、菌の体全体がデコボコしてますね。

これは大腸菌が行動不能になっていて、最終的には細菌の体を形作っている細胞も壊れていることを示します。

ハニウィキちゃん
写真だと分かりやすいよね〜。

まとめ

お疲れ様でした!

英文の引用が多くてスミマセン….客観性のあるデータって英語が多いんです(泣)

ちょっと小難しい話になってしまいましたが、ハチミツの抗菌作用をまとめると以下のような感じです。

  • 高い糖度が細菌の活動に必要な水分を奪ってしまう
  • 病原性細菌(大腸菌とか)の何種類かは弱酸性がニガテ
  • ハチミツに含まれるミネラル分ポリフェノール過酸化水素の抗菌作用を増幅させる
  • マヌカハニーはさらに、メチルグリオキサールが細菌のせん毛やべん毛を破壊する
ハニウィキちゃん
これが現在のところ科学的に言われていることになるのかな?

今回引用させてもらった資料以外にもいろいろ目を通したのですが、同じようなことが書いてあったので、ある程度は事実を反映しているものと思います。

この記事の情報が皆さんの参考になれば幸いですm(_ _)m

ハニウィキちゃん
今回のお話はここまでだよ。
最後まで読んでくれて本当にありがとう!

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