精度は80%以上!? ハチは人の顔を認識して見分けられるという研究報告を紹介

ハチのアップ写真

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2018年に、「ハチは人の顔を見分けることができる」とする研究論文(1)が発表されました。

私たち人間が他人の顔を見分けることができるのは、脳に顔認識専門の脳細胞があるためで、目の前に複数の顔が並んでいても僅かな差から瞬時に特定の人を認識することができるそうです。

脳には顔認識処理専門の部位がある

人間が目でものを見るメカニズムは、よくカメラの仕組みに例えられますが、映像をそのまま保存するカメラよりはるかに複雑な処理を、人間の目と脳は行っています。

引用:人間はなぜ他人の顔をすぐ見分けられるのか?|Yumenavi

人間の顔を見分けられる動物としては、チンパンジー・犬・ハト・カラス・馬・羊などがこれまで研究で明らかになっているそうですが、今回は昆虫でヒトの顔を識別できる事例があったとのことなので、ご紹介したいと思います!

ハニウィキちゃん
ハチから「お前のツラ覚えたからな!」と思われることは控えた方が良い、かもね〜

ミツバチもスズメバチも人の顔を覚えられる

ハチのヒト顔識別実験実験で使われた写真と、ハチの正解率(出典:参考文献(1)
A:写真を貼った回転できる台
B:実験で使われた白黒の顔写真
C:ミツバチ(黒棒)とスズメバチ(白棒)の正解率

2018年に発表された研究では、ミツバチスズメバチに対して、人間の顔を識別できるかどうかを実験したそうです。

結論から言うと、ミツバチもスズメバチも人間の顔をある程度識別できました

ハニウィキちゃん
その結果が上の写真なのかな?

そうですね。ちょっとややこしいんですが、簡単に解説すると、

Aの回転できる台には、ハチに見分けさせる写真が貼ってあります。

正解の写真には美味しい砂糖水があります。

そして台をランダムに回転させて、ちゃんと顔を識別しないと正解にたどり着けないようにしてるんですね。

ハニウィキちゃん
ハチが位置を覚えるだけで正解に行けないようにするってことね。

Bにはいくつも写真がありますが、これらは全て2人の男性です。

Trainingの写真でS+の人の顔には正解の砂糖水、S-の人の顔には不正解のただの水を置いて、まずはハチたちにS+の人の方にご褒美があるよ!と学習させたんです。

そしてLearning TestではTrainingでの写真をそのまま使って、ちゃんと人の顔を覚えているか検証しているんですね。

ハニウィキちゃん
Cのグラフを見るとLearningはミツバチもスズメバチも正解率が80%くらいあるね!

そうですね。でもこれだけではまだ人間の顔を識別しているとは言い切れません。目や鼻の形の特徴ではなくて、シルエット(頭の輪郭の形)だけを見て区別している可能性もあるので…

そこでInner Testではカツラをかぶせた合成写真を使いました。

そうすると正解率はやや下がり、60%ほどになってますね。目や鼻の特徴だけでは人の顔を識別できないハチたちが少しいるようです。

ハニウィキちゃん
ふむふむ、それでも過半数のハチたちは見分けられてるね〜

次にPart-Whole Testという、2人の男性の頭部の輪郭を全く同じにした合成写真でテストしています。よく見ると、不正解の写真は、正解の顔の目・鼻・口だけを消して、その代わりに不正解の人の顔を合成してます。

2人の髪型やあご周りの輪郭が全く同じになっていて、これも目や鼻などの顔のパーツが見分けられないと正解にはたどり着けません。

でもこれだとハチたちの正解率は80%以上という好成績です。

ハニウィキちゃん
さっきのInner Testのカツラは難易度が高すぎたってことかな?

そうかもですね。私も同一人物がカツラかぶっただけと気づくのに数分かかりました(汗)

そして最後にComposite Testという、不正解の顔の輪郭に両方を統一した合成写真でテストしています。Part-Whole Testの逆バージョンですね。

これだとハチたちの正解率は急激に下がり、40%程度しか正解にたどり着けませんでした。

目や鼻などの顔のパーツは同じだけど、頭の形や髪型などの雰囲気が変わってしまうと、ハチたちはそれに敏感に反応して識別が難しくなるようです。

ハニウィキちゃん
ハチたちは目や鼻とかのパーツだけじゃなくて、顔全体の変化も判断材料にしているってことかな。

研究発表でもそのような見解がされてますね。

ミツバチもスズメバチも、人の顔をシルエットだけではなく、目や鼻などのパーツだけでもなく、それら両方を見て識別していることが多いのかもしれません。

ちなみに私も、知り合いの髪型と髪色が急激に変わると、その人と認識できないことがままあります(悲)

研究発表では、もともとハチたちは「目で見てモノを学習する能力が高い」と言われていて、さらに、他の昆虫に比べて「キノコ体」と呼ばれる脳の部位が発達しており、それが視覚的学習能力に貢献しているのではないかとのこと。

Hymenopteran species such as bees and wasps do possess particularly developed mushroom bodies in comparison to other insects. As the evolutionary development of mushroom bodies started back with ancestral parasitoid wasps that shared with bees spatial, visual, or olfactory learning need, the mushroom bodies are consequently considered as promoting learning abilities and flexibility.

【訳】ハチやスズメバチなどは、他の昆虫と比較して特に発達したキノコ体を持っています。キノコの体の発達は、ハチたちの空間的・視覚的・嗅覚的な学習の必要性は捕食寄生性スズメバチから派生しており、キノコ体は学習能力と柔軟性を促進すると考えられています。

引用:Does Holistic Processing Require a Large Brain? Insights From Honeybees and Wasps in Fine Visual Recognition Tasks|Front. Psychol., 31 July 2018

顔を識別するような能力は、これまでは人間やその他の特定の哺乳類のように脳細胞の数が膨大(億単位)な生物だけの能力と思われていたそうですが、このハチに関する研究をはじめ、近年では様々な動物でその能力があると証明されつつあるようです。

ハニウィキちゃん
ハチとかは脳細胞は100万個未満って言われてるよね。

そうです。

そしてそこが重要なポイントで、複雑な脳の仕組みがなくても人間の顔の判別くらいは可能であるなら、「AI(人工知能)で更に精度の高い顔認識システムが作れる」という期待が生まれているんだとか。

どんな研究も人間の暮らしに結びつけることができるものなんですね〜。

ハニウィキちゃん
今回のお話はここまで。
最後まで読んでくれてありがとう!

参考文献

(1)Does Holistic Processing Require a Large Brain? Insights From Honeybees and Wasps in Fine Visual Recognition Tasks|Front. Psychol., 31 July 2018

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