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ハチたちが世界的に数を減らしていっている『蜂群崩壊症候群』が問題になっています。
その原因の1つとして有力視されている「ネオニコチノイド系」の農薬(殺虫剤)が、ハチたちに、人間で言うところのニコチン中毒と似た依存作用を及ぼしているとの研究発表(1)があります。
そうですよね。
でもハチたちは好んでネオニコチノイド入りのエサを追い求めるようになるんだとか…
今回はその研究発表についてご紹介しようと思います。
あえて薬物入りのエサを好むハチたち
その研究報告(1)によると、、、
10日間、ハチたちに、ただの砂糖水とネオニコチノイド系農薬成分が入った砂糖水を自由に選ばせる実験をしたところ、最初のうちはどちらの砂糖水も区別なくハチが訪問していたものの、日が経つにつれ、ネオニコチノイド系農薬成分が入った砂糖水を好んで選ぶようになったのだそうです。
bumblebee (B. t. audax) workers increasingly prefer to visit and consume food containing thiamethoxam, thus showing the development of an acquired preference. This provides an important insight into the dynamics of foraging behaviour when bees are chronically exposed to neonicotinoid. Importantly, our initial observations of foraging visits provided no evidence of an initial preference for thiamethoxam-treated food.
【訳】マルハナバチ(B. t。audax)の働きバチたちは、チアメトキサム(ネオニコチノイド成分の一種)を含む食べ物を選び消費する傾向があるという結果は、新しい嗜好が生まれ発達したことを示します。そしてこの結果は、ミツバチがネオニコチノイドに慢性的にさらされている場合の採餌行動を考える上で重要な材料になります。ポイントは、採餌訪問の初期段階では、チアメトキサムを含んだ食べ物に対する好き嫌いは、最初には確認できなかったことです。
引用:Foraging bumblebees acquire a preference for neonicotinoid-treated food with prolonged exposure|PROCEEDINGS OF THE ROYAL SOCIETY B|Volume285, Issue 1885
ちょっと小難しいですが、要約すると、
- ハチはもともと、ネオニコチノイド系農薬に警戒することもなく寄ってくる。
- 最初は好きでもキライでもないけど、だんだんとネオニコチノイドが好きになる。
ということになります。

ネオニコチノイドで脳が刺激される
そもそもなぜネオニコチノイドがハチたちに悪影響を及ぼすのでしょうか?
別の研究(2)によると、ネオニコチノイドはハチたちの以下の部位に影響があるとのことです。
The target site for the neonicotinoids is the nicotinic acetylcholine receptors (nAChRs) commonly expressed in mushroom bodies, higher order insect brain structures that mediate multisensory integration, learning & memory.
【訳】ネオニコチノイドに影響される部位は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)という一般的にはキノコ体と呼ばれる部位で、ここは、多感覚統合・学習・記憶など、昆虫としては高いレベルの機能を司る部位です。
引用:Neonicotinoids target distinct nicotinic acetylcholine receptors and neurons, leading to differential risks to bumblebees|Scientific Reports 6, article number:24764
そして慢性的にその状態が続くと、脳の中の受容体がよりネオニコチノイドを欲するようになるのだとか。これは前述した研究でも結果が出ていましたね。
人間のニコチン中毒と仕組みが似ているそうです。

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まとめ
以前、「ハチは人の顔を識別することができる」という記事を書きました。その中で触れたのですが、ハチは昆虫の中でも「キノコ体」と呼ばれる脳組織が発達しており、それがハチたちの高い知能を支えているのではないか?という議論があります。
今回ご紹介した研究の結果によると、ネオニコチノイドは、そのキノコ体に作用してしまうらしいので、そういった背景もありネオニコチノイド系農薬が蜂群崩壊症候群の容疑者として挙がっているだと思われます。
ただ、蜂群崩壊症候群の原因としては、ネオニコチノイドの他にも感染症・寄生虫・栄養不足などなど、様々な要因が複合的に関係して起きているとの見解が一般的です。
ネオニコチノイド系農薬を使うのをやめられればそれに越したことはないかもですが、それだけでは問題解決になりそうにないのが蜂群崩壊症候群の難しいところですね…

最後まで読んでくれて、ありがとう!
参考文献
(1):Foraging bumblebees acquire a preference for neonicotinoid-treated food with prolonged exposure|PROCEEDINGS OF THE ROYAL SOCIETY B|Volume285, Issue 1885
(2):Neonicotinoids target distinct nicotinic acetylcholine receptors and neurons, leading to differential risks to bumblebees|Scientific Reports 6, article number:24764
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